翁島

磐梯山という火山は過去に何度となく山体崩壊をして、山麓に岩なだれが流れ下って、凹凸のある流れ山地形をつくってきた。

猪苗代盆地の東側には南北に延びる崖が見える。これは川桁断層の活動でできたものだ。また、盆地の西側には背炙山(せあぶりやま)断層がある。つまり2つの断層にはさまれた猪苗代盆地は周りよりも低い地形を作ってきた。

約5万年前には、南西方向に山体崩壊が起こり、岩なだれが猪苗代盆地の西側に堆積した。その際に川をせき止めて作られたのが猪苗代湖である。この湖の中の北西に位置する流れ山地形の一つが翁島なのである。そして、この島は猪苗代湖で唯一の島でもある。また、猪苗代湖の湖底地図を見ると、翁島の周りに流れ山地形が存在していることが分かる。

翁島は湖岸より近い距離にあるものの徒歩で渡ることはできない。そのため、その知名度に比べて島の実情を知る人は少ない。島の大きさは周囲が約1.2kmで、面積は85,000㎡である。1977(昭和52)年に地質・動物・植物・歴史・考古・民俗による総合調査が行われた。

この島に関してはいくつかの伝説があるが、弘法大師に関するものを紹介しよう。
「ある夏の暑い日に、貧しいなりをした僧が翁島を訪れた。その身なりからどこの家でも、彼に水を与えなかった。しかし、最後におきなと呼ぶ美しい娘の家に来たところ、おきなはその僧に快く冷たい水を与えた。それから数日後、地震が発生し地域の地面は窪み、水があふれて湖となり、皆おぼれて亡くなったが、おきなの家は窪まずそのまま島となり、おきなの一家は助かった。そこで翁島と名付けられた。貧しいなりの僧は弘法大師だったと言われる」

現在、この島は無人島で、自然の野鳥が生息している場所となっている。